農地を相続したら名義変更が必須?2024年に義務化の期限3年10ヶ月・罰則・費用を解説

更新日 2025.11.20

農地を相続したら名義変更が必須|手続きの流れと期限・費用を完全解説

農地を相続した場合、通常の不動産とは異なり「法務局での相続登記」と「農業委員会への届出」の2つの手続きが必要です。2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記、10ヶ月以内に農業委員会へ届出をしないと、それぞれ10万円以下の過料が科される可能性があります。

農地の名義変更は必要書類が多く、登録免許税や書類取得費用に加えて、水利組合脱退金(40万円程度)など農地特有の隠れコストが発生するケースもあります。手続きを放置すると売却や活用ができないだけでなく、世代をまたぐと権利関係が複雑化し、遺産分割協議が難航するリスクも高まります。

本記事では、農地の名義変更に必要な手続きの流れ、必要書類、費用の内訳、期限、そして名義変更後の活用方法まで、実務経験に基づいた正確な情報をわかりやすく解説します。


■この記事で分かること■
  • 農地の名義変更が必要な理由と2024年義務化による期限・罰則
  • 法務局での相続登記と農業委員会への届出の具体的手順
  • 名義変更にかかる費用の完全内訳と農地特有の隠れコスト
  • 贈与・遺言で農地を取得した場合の手続きの違いと注意点
  • 名義変更後の農地活用方法7選と相続税納税猶予制度の活用法


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農地を相続したら名義変更が必要な理由と放置リスク

2024年4月から義務化された相続登記の期限と罰則

2024年4月1日から相続登記が法律で義務化されました。農地を相続した場合、相続を知った日から3年以内に法務局で相続登記を行わなければなりません。正当な理由なく期限内に手続きを怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。

この義務化は法改正前に相続した農地にも適用されます。たとえば、2020年に親が亡くなり農地を相続したものの、名義変更をしていない場合でも、改正法施行日(2024年4月1日)から3年以内、つまり2027年3月末までに登記しなければ罰則の対象となります。

遺産分割協議が長引いて期限内に相続登記できない場合は、「相続人申告登記」という暫定的な手続きを行うことで義務を履行したとみなされ、罰則を免れることができます。相続人申告登記は後日、正式な相続登記に切り替える必要がありますが、まずは期限を守ることが最優先です。詳しくは法務省の公式サイトをご確認ください。

名義変更しないと売却・活用できない法的根拠

農地の名義変更をしないと、登記簿上の所有者は被相続人のままです。法律上、不動産の売却や賃貸、担保提供などの権利行使は登記名義人にしか認められていません。相続人であっても名義が被相続人のままでは、これらの法律行為を行うことができません。

農地を売却したい場合、買主は登記簿で所有者を確認します。名義が故人のままでは売買契約を結ぶことができず、まず相続登記を完了させる必要があります。売却の話が進んでから名義変更しようとしても、必要書類の収集や遺産分割協議に時間がかかり、買い手を逃してしまう可能性が高まります。

農地を貸し出す場合も同様です。農地法に基づく農業委員会の許可申請には、登記名義人本人が申請者となる必要があります。名義変更していない状態では許可申請自体ができず、賃貸収入を得る機会を失ってしまいます。

世代をまたぐと手続きが複雑化する具体例

名義変更を放置したまま相続人が亡くなると、さらに次の世代へ相続が発生し、権利関係が複雑になります。具体例として、祖父が所有していた農地を父が相続したものの名義変更せず、その父も亡くなったケースを考えてみましょう。

この場合、現在の相続人が名義変更するには、祖父から父への相続と、父から現在の相続人への相続、2回分の相続登記手続きが必要です。それぞれの相続について、出生から死亡までの戸籍謄本を揃え、相続人全員の同意を得なければなりません。

世代をまたぐと相続人の数も増えます。祖父の相続人が父と叔父2人の計3人だった場合、父の代では子供3人、叔父たちにもそれぞれ子供がいれば、合計10人以上の相続人が関係することになります。全員の所在を確認し、遺産分割協議で合意を得るのは極めて困難です。面識のない親族との協議は難航しやすく、手続き完了まで数年かかるケースも珍しくありません。

農地の名義変更に必要な2つの手続きと完全タイムライン

【手続き①】法務局での相続登記(期限3年・必要書類・費用)

農地を相続したら、農地の所在地を管轄する法務局で相続登記を行います。期限は相続を知った日から3年以内です。相続登記とは、登記簿上の所有者名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。

必要書類は以下の通りです。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本(1通450円〜750円)、被相続人の戸籍附票(1通300円〜450円)、相続人全員の戸籍謄本(1通450円)、相続人全員の印鑑証明書(1通300円)、農地を相続する人の住民票(1通300円)、固定資産評価証明書(1通300円程度)です。遺産分割協議書または遺言書も必要となります。

費用面では、登録免許税として固定資産税評価額の0.4%を納付します。たとえば評価額1,000万円の農地なら4万円、2,000万円なら8万円です。書類取得費用は合計で1万円前後かかります。司法書士に依頼する場合は別途5万円〜10万円の報酬が必要です。詳しい手続きは法務局の相続登記ガイドブックをご参照ください。

【手続き②】農業委員会への届出(期限10ヶ月・注意点)

相続登記が完了したら、農地の所在地を管轄する市町村の農業委員会に届出を行います。期限は相続開始を知った日から10ヶ月以内です。農地は食料供給の重要な資源であるため、所有者の変動を農業委員会が把握する必要があり、農地法で届出が義務付けられています。

必要書類は、農業委員会の窓口またはホームページから取得できる届出書、法務局で取得した登記事項証明書(全部事項証明書、1通600円)です。自治体によっては公図の写しや被相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書の写しなどの追加書類を求められる場合があるため、事前に管轄の農業委員会に確認しましょう。詳細は農林水産省の届出案内をご確認ください。

届出期限の10ヶ月を過ぎた場合や虚偽の届出をした場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。遺産分割協議が長引きそうな場合は、いったん相続人全員で届出を行い、協議成立後に改めて正式な届出をすることで罰則を回避できます。農業委員会は基本的に各市町村に1つ設置されていますが、農地面積によっては複数ある地域や設置されていない地域もあるため、市町村役場に問い合わせて確認してください。

相続発生から完了までの全体スケジュール(図解)

農地相続の手続き全体の流れを時系列で整理します。相続発生(被相続人の死亡)から、以下の順序で進めていきます。

期間 必要な手続き 期限・注意点
相続発生〜3ヶ月 必要書類の収集開始(戸籍謄本、住民票、印鑑証明書等)
相続放棄の検討
相続放棄は相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述
3ヶ月〜10ヶ月 遺産分割協議の実施
遺産分割協議書の作成
法務局で相続登記を申請
農業委員会に届出
登記完了まで通常1〜2週間
農業委員会届出は相続開始から10ヶ月以内
10ヶ月〜3年 相続税の申告・納付
農業継続の場合は納税猶予制度の申請
相続税申告期限は相続開始から10ヶ月以内
相続登記は遅くとも3年以内に完了

【相続発生〜3ヶ月】必要書類の収集を開始します。被相続人と相続人全員の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書などを市区町村役場で取得します。相続放棄を検討する場合は、相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。手続きの詳細は裁判所の公式サイトをご確認ください。

【3ヶ月〜10ヶ月】遺産分割協議を行い、誰が農地を相続するか決定します。協議がまとまったら遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印します。法務局で相続登記を申請します。登記完了まで通常1〜2週間かかります。登記完了後、農業委員会に届出を行います。この届出は相続開始から10ヶ月以内に完了させる必要があります。

【10ヶ月〜3年】相続税の申告・納付期限は相続開始から10ヶ月以内です。農業を継続する場合は相続税の納税猶予制度を検討します。相続登記の義務化により、遅くとも相続を知った日から3年以内に登記を完了させなければなりません。

農地の名義変更にかかる費用の完全内訳と隠れコスト

登録免許税と書類取得費用の計算方法(具体例)

農地の相続登記にかかる費用は、登録免許税と必要書類の取得費用です。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%(1000分の4)で計算します。

具体例で見てみましょう。固定資産税評価額が500万円の農地の場合、500万円×0.4%=2万円です。評価額1,000万円なら4万円、1,500万円なら6万円、2,000万円なら8万円となります。農地は宅地に比べて評価額が低いため、登録免許税も比較的安く済むケースが多いです。

固定資産税評価額 登録免許税(0.4%)
500万円 2万円
1,000万円 4万円
1,500万円 6万円
2,000万円 8万円

必要書類の取得費用は、戸籍謄本・除籍謄本が1通450円〜750円、戸籍附票が1通300円〜450円、住民票が1通300円、印鑑証明書が1通300円、固定資産評価証明書が1通300円程度です。被相続人の本籍が複数回変わっている場合や相続人が多い場合、書類の取得数が増えるため費用も増加します。一般的には合計で5,000円〜15,000円程度を見込んでおくとよいでしょう。

登記申請時には収入印紙で登録免許税を納付し、書類は各市区町村役場の窓口または郵送で取得できます。2024年から戸籍謄本の広域交付制度が始まり、本籍地が遠方でも最寄りの市区町村役場で取得できるようになりました。ただし、除籍謄本や戸籍附票は広域交付の対象外のため、本籍地の役場に郵送請求する必要があります。

司法書士に依頼する場合の相場(5〜10万円)

相続登記は自分で行うこともできますが、専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士報酬の相場は5万円〜10万円程度ですが、事案の複雑さや地域によって異なります。

報酬が高くなるケースとして、相続人の数が多い場合、遺産分割協議が必要な場合、農地が複数の市町村にまたがっている場合などがあります。相続人が10人以上いる場合や、戸籍の収集に手間がかかる場合は、10万円を超えることもあります。

司法書士に依頼するメリットは、必要書類の収集代行、登記申請書の作成、法務局への申請手続きをすべて任せられることです。特に仕事や家事で忙しい方、法務局が遠方にある方、手続きに不安がある方にとっては、専門家に依頼することで時間と労力を大幅に節約できます。遺産分割協議書の作成も依頼できるため、法的に有効な書類を確実に作成できる安心感もあります。

見積もりは無料で行っている事務所が多いため、複数の司法書士事務所に相談して比較検討することをおすすめします。報酬だけでなく、対応の丁寧さや実績も重要な判断材料です。

農地特有の追加コスト(水利組合脱退金40万円等)

農地を売却または転用する場合、名義変更とは別に農地特有のコストが発生することがあります。特に注意が必要なのが水利組合の脱退金です。

水利組合(土地改良区)は農業用水の管理を行う組織で、組合員である農地所有者は賦課金を負担しています。農地を宅地に転用したり、農業を廃止したりする場合、水利組合を脱退する必要があり、その際に脱退金(脱退一時金)を求められることがあります。金額は地域や組合によって大きく異なりますが、20万円〜40万円程度が一般的で、場合によっては50万円を超えるケースもあります。

項目 費用相場 備考
登録免許税 評価額の0.4% 1,000万円なら4万円
書類取得費用 5,000円〜15,000円 相続人数により変動
司法書士報酬 5万円〜10万円 複雑な案件は10万円超
水利組合脱退金 20万円〜40万円 転用・売却時のみ
農地転用許可申請 10万円~15万円程 行政書士に依頼の場合
測量費用 30万円〜50万円 境界確定が必要な場合

農地転用許可申請を行政書士に依頼する場合、報酬として10万円〜15万円程かかります。農地転用には農業委員会または都道府県の許可が必要で、申請書類の作成や添付書類の準備には専門知識が必要です。自分で手続きすることも可能ですが、不備があると許可が下りず、再申請に時間がかかるリスクがあります。

測量が必要な場合は土地家屋調査士に依頼し、費用は30万円〜50万円程度かかることもあります。農地の境界が不明確な場合や、隣接地との境界確定が必要な場合に測量が求められます。これらの隠れコストを事前に把握しておかないと、予想外の出費に驚くことになります。

自治体による費用の違いと確認方法

農地の名義変更にかかる費用は、自治体によって微妙に異なります。戸籍謄本や住民票などの証明書発行手数料は各市区町村が条例で定めており、多くの自治体では全国統一の料金ですが、一部で独自の料金設定をしている場合があります。

農業委員会への届出に必要な書類も自治体によって異なります。届出書と登記事項証明書のみで済む自治体もあれば、公図の写し、案内図、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、遺産分割協議書の写しなど、追加書類を求める自治体もあります。事前に管轄の農業委員会に電話またはホームページで確認することが重要です。

農地転用の許可基準も自治体ごとに異なります。農業委員会が設定する農地取得の下限面積(通常50アール)も地域によって異なり、都市近郊では10アール、中山間地域では30アールとしている自治体もあります。売却を検討している場合は、買い手が満たすべき条件も変わってくるため、地域の基準を確認しておきましょう。

自治体の窓口で直接相談するのが最も確実ですが、多くの自治体ではホームページに手続きの案内や必要書類のリストを掲載しています。事前に情報を収集してから窓口に行くことで、スムーズに手続きを進められます。

贈与・遺言で農地を取得する場合の名義変更手続きの違い

特定遺贈と包括遺贈で許可要件が変わる理由

遺言によって農地を取得する方法には「特定遺贈」と「包括遺贈」の2種類があり、それぞれ農業委員会の許可要件が異なります。この違いを理解しておかないと、手続きで混乱する可能性があります。

特定遺贈とは、「○○市の田んぼを△△に遺贈する」のように、特定の財産を指定して遺贈する方法です。受遺者(遺贈を受ける人)が法定相続人以外の場合、農業委員会の許可が必要になります。これは農地法第3条に基づく規制で、農地が農業従事者以外の手に渡ることを防ぐためです。

包括遺贈とは、「全財産の2分の1を△△に遺贈する」のように、割合で遺贈する方法です。包括受遺者は民法上、相続人と同じ権利義務を持つと規定されています。そのため、法定相続人でなくても相続と同様に扱われ、農業委員会の許可は不要です。ただし、農業委員会への届出は必要で、期限は相続開始を知った日から10ヶ月以内です。

法定相続人に対する特定遺贈(「相続させる」旨の遺言)も、実質的には相続と同視されるため、農業委員会の許可は不要です。遺言の文言が「相続させる」なのか「遺贈する」なのかで解釈が変わる場合もあるため、遺言書を作成する際は専門家に相談することをおすすめします。

農業委員会の許可が必要なケースの判断基準

農業委員会の許可が必要かどうかの判断基準は、「誰が」「どのような方法で」農地を取得するかによって決まります。相続または包括遺贈による取得の場合は許可不要、それ以外(売買・贈与・特定遺贈)の場合は原則として許可が必要です。

取得方法 農業委員会の許可 農業委員会への届出
相続(法定相続) 不要 必要(10ヶ月以内)
包括遺贈 不要 必要(10ヶ月以内)
特定遺贈(法定相続人へ) 不要 必要(10ヶ月以内)
特定遺贈(法定相続人以外へ) 必要 許可後に所有権移転
生前贈与 必要 許可後に所有権移転
売買 必要 許可後に所有権移転

売買で農地を取得する場合、買主は農地法第3条の許可基準を満たす必要があります。主な基準は、取得後の農地面積が原則50アール以上であること、農業に必要な機械や労働力を有していること、取得後も継続して農業を営むことなどです。これらの基準を満たさないと許可が下りず、農地の売買はできません。

贈与の場合も同様に農業委員会の許可が必要です。親から子への生前贈与であっても、贈与である以上は許可申請を行わなければなりません。ただし、農業を営む親族間での贈与であれば、比較的許可が下りやすい傾向があります。

特定遺贈で法定相続人以外が農地を取得する場合も許可が必要です。遺言で「友人の○○に農地を遺贈する」としていても、○○が農業従事者でなければ許可が下りない可能性が高いです。遺言を作成する際は、受遺者が許可基準を満たすかどうかを事前に確認しておくことが重要です。

法定相続人以外が取得する場合の追加手続き

法定相続人以外の人が農地を取得する場合、通常の相続よりも手続きが複雑になります。特定遺贈や贈与の場合、農業委員会の許可を取得してから所有権移転登記を申請する流れになります。

許可申請の手続きは以下の通りです。農業委員会に農地法第3条許可申請書を提出し、必要書類として、農地の登記事項証明書、公図の写し、位置図、農業経営計画書、取得者の農地の位置関係図、機械・施設の所有状況を示す書類などを添付します。申請後、農業委員会の定例総会で審議され、許可・不許可が決定されます。審査には通常1〜2ヶ月かかります。

許可が下りたら、許可書を添付して法務局で所有権移転登記を申請します。登記申請は登記権利者(農地を取得する人)と登記義務者(遺贈の場合は遺言執行者または法定相続人全員、贈与の場合は贈与者)が共同で行う必要があります。遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる必要があり、手続きがさらに複雑化します。

法定相続人以外が農地を取得する計画がある場合は、生前から専門家(司法書士・行政書士・弁護士)に相談し、遺言の内容や手続きの流れを確認しておくことを強くおすすめします。

名義変更後の農地活用方法7つと各選択肢のメリット・デメリット

農業を続ける場合の相続税納税猶予制度(実質免除)

農地を相続して農業を継続する場合、相続税の納税猶予制度を活用できる可能性があります。この制度を利用すれば、一定要件を満たしている間は相続税の納税が猶予され、最終的には免除される場合もあるため、非常に大きなメリットがあります。

納税猶予制度の適用を受けるには、被相続人・相続人・農地それぞれに要件があります。被相続人の要件は、死亡日まで農業を営んでいた、または特定貸付けをしていたことです。相続人の要件は、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに農業経営を開始し、引き続き農業を営むことです。農地の要件は、被相続人が営農していた農地で、遺産分割が完了していることです。

納税が猶予される税額は、農地を農業投資価格(通常の評価額より大幅に低い価格)で評価した場合との差額部分です。実質的に相続税の大部分が猶予されることになり、相続人が農業を続けている限り納税は不要です。相続人が死亡した場合、または後継者に生前一括贈与した場合は、猶予されていた相続税が免除されます。

注意点として、農業をやめて農地を転用したり売却したりすると、猶予が打ち切られ、猶予税額に加えて利子税も納付しなければなりません。納税猶予期間中は3年ごとに「継続届出書」を税務署に提出する必要があり、この届出を忘れると猶予が打ち切られるため、管理を徹底しましょう。詳細は国税庁の公式サイトをご確認ください。

農業をしない場合の選択肢(売却・賃貸・転用・国庫帰属)

農業を継続しない場合、農地をそのまま保有し続けると固定資産税や管理費用がかかり続けるため、売却・賃貸・転用・国への返還などの選択肢を検討する必要があります。

売却する場合、農地のまま売却するか、宅地に転用してから売却するかの2通りがあります。農地のまま売却する場合は、買主が農業従事者であることが必要で、農業委員会の許可を得なければなりません。買い手が限定されるため、売却価格は低くなる傾向があります。宅地に転用してから売却する場合は、農業委員会の転用許可が必要ですが、買い手が見つかりやすく、高値で売却できる可能性があります。

活用方法 メリット デメリット 農業委員会の許可
農業継続 納税猶予制度の適用可能 設備投資や労力が必要 不要
農地のまま売却 転用手続き不要 買い手が限定的、価格が低い 必要
宅地転用後売却 高値売却の可能性 転用許可が必要、費用がかかる 必要
賃貸 賃料収入、管理負担軽減 借り手探しが必要 必要
太陽光業者への売却・賃貸 売却手続きのサポートが充実 土地要件に合致する必要がある、入金まで1年程かかる 必要(サポートあり)
国庫帰属制度 所有権手放せる 負担金必要、審査あり 不要
相続放棄 全ての相続義務を回避 他の財産も放棄、3ヶ月期限 不要

賃貸する場合は、近隣の農家や農業法人に貸し出す方法と、農地中間管理機構(農地バンク)に登録する方法があります。賃料収入を得られるうえ、借り手に維持管理を任せられるため、所有者の負担が軽減されます。ただし、農業委員会の許可が必要です。

相続土地国庫帰属制度を利用すれば、要らない土地を国に引き渡すことができます。ただし、すべての土地が対象になるわけではなく、審査基準を満たす必要があります。農地の場合、10年分の土地管理費用相当額の負担金(数十万円〜数百万円)を納める必要があり、事前に相続登記も完了させなければなりません。

太陽光業者による無料代行サービスの活用

農地を売却または活用する際、農地転用許可申請、水利組合の脱退手続き、相続登記など、多くの手続きと費用が発生します。これらを個別に専門家に依頼すると、合計で100万円以上かかることも珍しくありません。

太陽光業者の中には、農地の買取や賃借を前提に、これらの手続きを無料で代行してくれるサービスを提供している企業もあります。農地転用許可申請(通常10万円前後)、水利組合・土地改良区の脱退手続き(脱退金40万円程度)、相続登記、測量・現場調査(30万円~50万円程)、農振除外申請など、本来であれば所有者が負担すべき費用や手間をすべて業者が負担してくれます。

このようなサービスのメリットは、費用負担を軽減し、煩雑な手続きをプロに任せることができる点です。特に仕事や家事で忙しい方、手続きに不安がある方、遠方に住んでいて現地に行くのが難しい方にとっては、非常に便利な選択肢です。農地の活用方法として、太陽光発電所や蓄電所、賃借など複数のプランを提案してもらえるため、自分の状況に合った最適な方法を見つけやすくなります。

注意点として、太陽光業者へ売却には、農地転用許可や、日当たり、傾斜、ハザード要件、電力インフラなど事業化に必要な要件が複数存在します。これらは全て太陽光業者が確認を行うため手間はかかりませんが、時間はかかります。入金まで1年以上は余裕を持って相談されることをおすすめします。

また、太陽光発電業者の求める土地要件に合わなかった場合は契約ができないので、土地の事前確認が丁寧な業者を選ぶことで、時間のロスを少なくできると考えられます。

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農地の名義変更でよくある失敗例と確実に成功させるポイント

自治体ごとのローカルルールで申請が却下されるケース

農地の名義変更や農業委員会の許可申請では、自治体ごとに独自のルール(ローカルルール)が存在し、それを知らずに申請すると却下されることがあります。全国統一の法律に加えて、地域の実情に応じた細かい運用基準が設けられているためです。

具体例として、農地取得の下限面積が挙げられます。農地法では原則50アール(5,000平方メートル)以上としていますが、都市近郊では10アール、中山間地域では30アールと自治体ごとに異なる基準を設定しています。買主が取得後に所有する農地面積がこの基準を満たさないと、売買の許可が下りません。

農業委員会への届出で求められる書類も自治体によって異なります。届出書と登記事項証明書のみで済む自治体もあれば、公図の写し、案内図、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、遺産分割協議書の写し、委任状など、多数の書類を求める自治体もあります。事前に確認せずに窓口に行くと、書類不備で受理されず、再度出直すことになります。

農地転用の許可基準も地域によって大きく異なります。市街化区域では比較的転用しやすい一方、農業振興地域内の農用地区域(青地)では原則として転用が認められません。自分の農地がどの区域に該当するかは、市町村の農政課や農業委員会で確認できます。申請前に必ず管轄の農業委員会に相談し、地域の基準や必要書類を確認することが成功のポイントです。

遺産分割協議の長期化で期限切れになるトラブル回避法

農地の名義変更では、相続登記の期限(3年以内)と農業委員会への届出期限(10ヶ月以内)が設定されていますが、遺産分割協議が長引くと期限に間に合わないリスクがあります。相続人同士の意見が対立したり、連絡が取れない相続人がいたりすると、協議が何年も続くケースも珍しくありません。

期限切れを回避する方法として、「相続人申告登記」があります。これは2024年の法改正で新設された制度で、正式な相続登記が完了する前に、暫定的に「自分が相続人である」ことを申告する手続きです。相続人申告登記を行えば、相続登記義務を履行したとみなされ、10万円以下の過料を免れることができます。その後、遺産分割協議が成立したら、正式な相続登記に切り替えます。

農業委員会への届出についても、遺産分割協議が未了の場合は、いったん相続人全員の共有名義で届出を行うことで期限内の届出義務を果たせます。協議成立後、改めて最終的な所有者が決まったことを届け出ればよいのです。

遺産分割協議を円滑に進めるポイントは、早期に相続人全員で話し合いの場を設けることです。相続人の所在確認や連絡先の把握は時間がかかるため、相続発生後すぐに着手しましょう。協議が難航しそうな場合は、弁護士や司法書士に相談し、調停や遺産分割協議書の作成を依頼することも検討してください。

専門家(司法書士・行政書士・弁護士)の使い分け方

農地の相続手続きでは、複数の専門家が関わる場合があり、それぞれの役割を理解して適切に依頼することが重要です。専門家の使い分けを間違えると、余計な費用がかかったり、手続きが滞ったりする可能性があります。

専門家 専門分野 依頼できる内容 報酬相場
司法書士 相続登記 登記申請書作成、書類収集代行、遺産分割協議書作成 5万円〜10万円
行政書士 農業委員会手続き 農地法許可申請、農地転用申請、農業委員会届出 10万円前後
弁護士 紛争解決 遺産分割協議の調整、調停・審判代理、相続放棄手続き 事案による
土地家屋調査士 測量・境界確定 農地の測量、境界確定、地目変更登記 50万円〜100万円
税理士 相続税申告 相続税申告書作成、納税猶予申請、税務相談 事案による

司法書士は、相続登記(不動産の名義変更)の専門家です。法務局への登記申請書の作成・提出、必要書類の収集代行、遺産分割協議書の作成などを依頼できます。農地の名義変更では必ず登記が必要になるため、司法書士への相談が最も重要です。報酬相場は5万円〜10万円程度です。

行政書士は、農業委員会への届出や許可申請の専門家です。農地法第3条の許可申請書、農地転用許可申請書、農業委員会への相続届出書などの作成・提出を依頼できます。農地を売却・転用する場合や、農地法の許可が必要な場合は行政書士に相談しましょう。報酬は手続き内容によって異なりますが、農地転用許可申請で10万円〜15万円が相場です。

弁護士は、遺産分割協議が難航している場合や、相続人間で争いがある場合に依頼します。法律的な助言、遺産分割調停・審判の代理、相続放棄の手続きなどを依頼できます。トラブルが予想される場合は早めに弁護士に相談することで、問題の深刻化を防げます。

実際の手続きでは、司法書士に相続登記を依頼し、行政書士に農業委員会への届出を依頼するという形で、複数の専門家に分けて依頼するケースが多いです。ワンストップで対応できる事務所もあるため、事前に対応範囲を確認して相談先を選びましょう。

農地の相続と名義変更に関するまとめ

農地を相続した場合、法務局での相続登記と農業委員会への届出の2つの手続きが必要です。2024年4月の法改正により、相続を知った日から3年以内に登記、10ヶ月以内に届出をしないと、それぞれ10万円以下の過料が科される可能性があるため、期限厳守が重要です。

名義変更にかかる費用は、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)、必要書類の取得費用(1万円前後)、司法書士報酬(5〜10万円)が基本です。農地を売却・転用する場合は、水利組合脱退金(40万円程度)や農地転用許可申請費用(10万円前後)など、農地特有の隠れコストが発生する可能性があります。自治体によって手続きや費用が異なるため、事前に管轄の農業委員会に確認しましょう。

名義変更後の農地活用方法として、農業を継続する場合は相続税の納税猶予制度を活用できます。農業をしない場合は、売却、賃貸、宅地転用、営農型太陽光発電、相続土地国庫帰属制度の利用などの選択肢があります。それぞれメリット・デメリットがあるため、自分の状況に合った方法を選ぶことが大切です。

相続した農地を活用しない場合、売却や賃借も有効な選択肢です。グリーンエナジー&カンパニーでは、農地転用許可申請や水利組合脱退手続き、相続登記など、通常50万円以上かかる手続きを無料で代行し、太陽光発電所や蓄電所、賃借などの活用プランを提案しています。草刈りや固定資産税の負担から解放され、賃料収入や売却代金を得られる可能性があります。無料相談も可能ですので、農地の活用にお悩みの方は、専門業者への相談も検討してみてください。

農地の名義変更は手続きが複雑で期限も厳しいため、不安がある場合は司法書士や行政書士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。確実に手続きを完了させ、相続後の農地を適切に管理・活用していきましょう。

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